言わなければ伝わらないを徹底する
ANAは日本を代表する航空会社です。
JALの倒産までは航空業界の二番手という印象がどうしても強かったのですが、今ではその内部のマネジメントが非常に優れているということで注目を集めるようになっています。
現在では海外からのLCC参入など非常に厳しい競争状況におかれているANAですが、その中でも独自のサービスの質の高さを武器に経営を続けています。
航空会社の仕事は飛行機を各地に飛ばすことですが、それを担う部署は大きく3つに分けることができます。
一つ目がパイロットや客室乗務員のような運行管理業務、二つ目が飛行機のメンテナンス作業を行う整備士、三つめが航空管制塔からレーダーを使って状況を把握する航空管制官です。
他にも空港内で勤務をするスタッフや飛行場に着陸する機体を誘導したりするスタッフなど細かい仕事は多いのですが、だいたいこの三つが主な業務基幹となっています。
ANAが独特の業務マネジメントをしているのが最初の「運行管理業務」と次の「整備士」で、忙しいタイムスケジュールで動かなくてはならない中で、いかに伝達ミスを防ぐかというところにポイントをおいています。
その業務コミュニケーションの基本中の基本が「言わなければ伝わらない」で、言ったつもり、伝えたつもりではなくお互いにきちんと意思疎通ができているかということを確認しながらの作業を徹底させているといいます。
書面と口頭の二つの方法で確認
整備士業務の場合などは、交代をするときに引き継ぎ業務を伝達しなくてはいけません。
このとき行うべき作業については必ず書面で知らせるようにしているのですが、ANAでは書面だけでなくさらに口頭でもそのことを確認するようにしています。
長く作業に従事していると、簡単な略称や場所の説明だけで「やっといて」で済ませたくなってしまうところですが、そうした言外のコミュニケーションに頼りすぎる方法では必ずどこかのタイミングで誤解が生じることになってしまいます。
例えば「○○の部分のコードを三本つないでおいて」という指示ではなく、きちんと三本のコードをどのようにつなぐかということを図面にしておくといった感じです。
そうしたともすると面倒に感じる確認作業を徹底させることで、やったつもり、伝えたつもりという作業で起こる人為ミスを防ぐことができるのです。
航空業界においては些細なミスが大事故につながってしまうことになり、結果乗客が百人単位で犠牲になってしまうということもあります。
そうした社会的な責任感を意識した取り組みであるといえるでしょう。
客室乗務員は「話しかけやすい」人になること
もう一つANAのコミュニケーション術として特筆すべきなのが客室乗務員の接客です。
客室乗務員といえばフライトの最中に乗客からの注文を受けて飲み物や食べ物を提供したり、温度やその他のトラブルに対応するための仕事です。
しかし実際にフライトを利用する人の多くが、何か希望や要望があっても客室乗務員には伝えずに我慢をしているのが現状です。
そこでANAではより「話しかけやすい人」になるために、目線や歩き方の指導を徹底して行っています。
この乗客に対しての気遣いはそのまま仕事をしていく上でのコミュニケーションにつながるので、よりチーム内の連携がとりやすく安全な業務を遂行していくことができます。